大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和61年(ネ)2690号 判決 1987年5月21日

控訴人・附帯被控訴人(被告)

田中望

ほか二名

被控訴人・附帯控訴人(原告)

福田節子

ほか三名

主文

本件控訴並びに附帯控訴をいずれも棄却する。

被控訴人(附帯控訴人)福田節子の慰謝料に関する新請求を棄却する。

控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)らの、附帯控訴費用は被控訴人(附帯控訴人)らの各負担とする。

事実

一  当事者の求めた裁判

1  控訴人(附帯被控訴人。以下単に「控訴人」という。)ら

(控訴の趣旨)

(一) 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。

(二) 被控訴人(附帯控訴人。以下単に「被控訴人」という。)らの請求を棄却する。

(三) 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

(附帯控訴の趣旨に対する答弁)

(一) 本件附帯控訴を棄却する。

(二) 被控訴人福田節子の慰謝料に関する新請求を棄却する。

2  被控訴人ら

(控訴の趣旨に対する答弁)

本件控訴を棄却する。

(附帯控訴の趣旨)

(一) 原判決を次のとおり変更する。

(二) 控訴人田中望、同株式会社ヒロタは、各自、被控訴人福田節子に対し一億七五九三万〇四四一円(慰謝料九〇〇万円の追加新請求を含む。)、被控訴人岩渕治子、同福田恒子、同内田祥子に対し各一七九九万四〇四八円、及び右各金員に対する昭和六〇年八月三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

(三) 控訴人安田火災海上保険株式会社は、被控訴人福田節子の控訴人田中望、同株式会社ヒロタに対する本判決が確定したときは、同被控訴人に対し一億七五九三万〇四四一円(慰謝料九〇〇万円の追加新請求を含む。)及びこれに対する同判決確定の日の翌日から支払ずみまで年五分の割合による金員を、被控訴人岩渕治子の控訴人田中望、同株式会社ヒロタに対する本判決が確定したときは、同被控訴人に対し一七九九万四〇四八円及びこれに対する同判決確定の日の翌日から支払ずみまで年五分の割合による金員を、被控訴人福田恒子の控訴人田中望、同株式会社ヒロタに対する本判決が確定したときは、同被控訴人に対し一七九九万四〇四八円及びこれに対する同判決確定の日の翌日から支払ずみまで年五分の割合による金員を、被控訴人内田祥子の控訴人田中望、同株式会社ヒロタに対する本判決が確定したときは、同被控訴人に対し一七九九万四〇四八円及びこれに対する同判決確定の日の翌日から支払ずみまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

(四) 訴訟費用は第一、二審とも控訴人らの負担とする。

二  当事者の主張

左記のとおり訂正、追加するほか、原判決事実摘示第二と同一であるからそれをここに引用する。

(原判決の訂正)

1  原判決五丁裏三行目「ない。」の次に「なお、控訴人らは、訴訟前の交渉段階及び原審審理の初期の時点においては、亡龍三の右生活費控除割合(三五パーセント)を全く争わなかつたものである。」を加え、同六丁表四行目「生命を奪われたものであり、」を「不慮の事故により生命を奪われたもので、亡龍三の被つた精神的苦痛は計り知れないものである。また、」と改め、同七行目から同一〇行目まで全部を削除し、同一二行目以下同裏二行目まで全部を「よつて被控訴人節子の被つた精神的苦痛は甚大であり、これらを金額に換算すると、亡龍三の慰謝料は二四〇〇万円、被控訴人節子の慰謝料は一一〇〇万円をそれぞれ下らないというべく、被控訴人らの亡龍三の慰謝料の相続分は、被控訴人節子一八〇〇万円、被控訴人治子、同恒子、同祥子各二〇〇万円となり、以上を総合すれば、本件における慰謝料は、被控訴人節子分二九〇〇万円、被控訴人治子、同恒子、同祥子分各二〇〇万円がそれぞれ相当である。」と、同裏五行目「を委任し、」を「(控訴に対する応訴並びに附帯控訴の提起追行を含む。)を委任し、第一、二審を通じ、」と、同九行目「一億八五六八万」を「一億九四六八万」と、同一〇行目「二三〇七万」を「二〇〇七万」と、それぞれ改める。

2  同七丁表三行目、同七行目から同八行目の各「一億六六九三万」をいずれも「一億七五九三万」と、同四行目、同一一行目の各「二〇九九万」をいずれも「一七九九万」と、それぞれ改め、同裏六行目「あつたこと」の次に「、控訴人らが訴訟前の交渉段階及び原審審理の初期の時点において、亡龍三の生活費控除割合(三五パーセント)を争わなかつたこと」を加え、同一二行目「、原告恒子」以下同末行「いたこと」までを削除する。

(控訴人らの当審における主張の要旨)

1  亡龍三の逸失利益の算定に当たつては、税金(所得税及び地方税)を控除すべきであり、これを否定した原判決には、所得税法九条一項二一号、自動車損害賠償保障法三条及び民法七〇九条の解釈適用を誤つた違法があり、また、最高裁判所判例(昭和三二年七月一七日判決・民集一二巻一二号一七五一頁、昭和四二年一一月一〇日判決・民集二一巻九号二三五二頁、ほか)違反があり、さらに憲法七六条の違背がある。

2  なお、実務上は、高額所得者に限つて税金を控除すべきであり、右の高額所得者とは、現在、社会通念上年間所得一〇〇〇万円を超える者である。

(右主張の要旨に対する控訴人らの認否)

いずれも争う。

原判決には、所論の違法、判例違反、違憲はない。

三 証拠関係は本件記録中の書証目録、証人等目録の記載を引用する。

理由

当裁判所も、当審における資料を加えて本件全資料を検討した結果、被控訴人らの各請求は原判決が認容した限度において理由があるので認容し、その余(当審において追加した新請求を含む。)は理由がないので棄却すべきものと判断する。その理由は、左記のとおり訂正、追加するほか、原判決理由説示(原判決九丁裏六行目以下同一三丁裏末行まで)と同じであるからそれをここに引用する。

一  (原判決の訂正)

原判決一〇丁裏三行目「総合勘案すると、」の次に「控訴人らが、訴訟前の交渉段階及び原審審理の初期の時点において、亡龍三の生活費控除割合(三五パーセント)を争わなかつたこと(この点は当事者間に争いがない。)を考慮に容れても、」を加え、同一一丁裏五行目「ものというべきである。」を「(最高裁判所昭和四五年七月二四日第二小法廷判決・民集二四巻七号一一七七頁参照)。この理は、本件被害者について、別異に解すべき理由はない。」と改め、同一二丁裏一行目以下九行目まで全部を削除し、同一三丁表六行目「甲第九号証」の次に「弁論の全趣旨から真正に成立したものと認める甲第一四号証、」を加え、同九行目「を委任し、」を「(控訴に対する応訴並びに附帯控訴の提起追行等を含む。)を委任し、第一、二審を通じ、」と、同裏二行目「原告らの原告ら」を「被控訴人らの控訴人ら」と、同末行「棄却する」を「棄却すべきである。」と、それぞれ改める。

二  (追加説示)

控訴人らは、亡龍三の逸失利益の算定に当たつては、税金(所得税及び地方税)を控除すべきであり、これを否定した原判決には、控訴人ら指摘の違法、判例違反、違憲がある旨を主張するが、この点についての当裁判所の判断は訂正引用の原判決理由説示のとおりであり、所論は採用できない。

してみると、同旨の原判決は相当であつて、本件控訴並びに附帯控訴はいずれも理由がなく、被控訴人節子の慰謝料に関する当審において追加した新請求も理由がないのでこれらをいずれも棄却することとし、控訴費用、附帯控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 後藤静思 橋本和夫 奥平守男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例